Manabox ベトナム会計

 こんにちは、ベトナムでマナボックスベトナムという会計のコンサルティングファームの代表をしている菅野と申します。ベトナムに駐在される社長様や管理系の駐在員様は、会計についてお悩みがあるかと思います。そこで本日は、ベトナムの会計制度の特徴についてお伝えしたいと思います。
 
「日本と違いわかりにくい」
「本社の社長や管理部門からの会計に関する質問に回答できずハラハラしてしまう」

 など、ベトナムで活躍するあなたも経験があるのではないのでしょうか?

 ベトナムの会計制度について、日本と違うところやこれは特徴的だなという点10個厳選しました。そのため、最低限、これだけおさえて頂ければベトナムの会計制度の大枠を理解して頂けると思います。なので、決算書を見たときの基本的な疑問も解消されますし、本社の管理部門の人からの質問にも回答できるようになり、よりビジネスに集中できるようになります。

 どうしてそのようなことが言えるのか?

 それは、私は、公認会計士として、いろんな国の会計に携わってきたからです。

 BIG4とよばれる大手外資系で7年間、日本の会計基準だけでなくUSGAAPやIFRSが適用されるプロジェクトにも参加しました。その後、インドの日系の製造会社の財務責任者として、企業の内側から会計基準の適用を考えながら、財務諸表を作成してきました。そして、2016年からはベトナムのマナボックスベトナムのコンサルティングファームの代表としてベトナムの会計と向き合っています。

指定された勘定科目コード

 最も特徴的な点です。ベトナムでは、使用する勘定コードがルールによってあらかじめ定められています。
 例えば、現預金であれば112であるなどです。

ベトナム会計法による勘定コード表1

ベトナム損益計算書

 日本は、特に勘定科目コードは定められていません。勘定コードの設定は、会社の自由となっています。
 比較可能性といった意味では、とても便利だと思います。なので、ベトナムの経理の担当者は、勘定科目名でなく、番号で会話することがあります。

 たとえば、「6421の金額は、チェックした?」という経理担当者の会話の意味は、こうなります。

「管理部門の給与の金額は、チェックした?」

です。どの会社であれ、共通の勘定科目を利用するのです。

メリットとデメリット
 このように便利な面もありますが、欠点もあります。それは、もともと定められている勘定科目が、やや抽象的だいうことです。特に費用科目はその傾向が強いです。以下の表をご覧ください。

ベトナム会計制度 費用科目

 上記は、製造間接費の科目であり、ベトナム勘定科目は6つしかありません。しかし、一般的な製造間接費の科目は、上記のように20個程度あります。したがって、もともとの定められた勘定科目を利用してしまうと、会計から会社の経済的実態を読み取れないという問題が生じてしまいます。

 傾向として、外注費Outsourced service costsという勘定科目を用いて、複数の要素の取引を記帳することがあります。そのため、この科目には様々な要素の取引が含まれ金額が大きくなってしまうことがよくあります。

911という勘定科目
 ベトナムには911という特徴的な勘定科目があります。これは、経営活動の結果を集める勘定です。すなわち、損益計算書の項目については、決算の締めの際に、この勘定科目に全て振り返ることなります。

 したがって、決算整理後の試算表を確認すると、残高がゼロになっています。なぜならば上記で申し上げたとおり、911という勘定に振り返るからです。そのため、日本人の担当者からすると、不思議に感じる。違和感を感じる。ということがよくあります。

チーフアカウンタント(会計主任)という制度

 ベトナムでは、経理責任者としてチーフアカウンタントという認定を持った人を採用する必要があります。例外事項として、設立から12ヶ月間や会社の規模によっては免除されています。

 チーフアカウンタントという資格は、簡単に取得可能です。すなわち、実際に経理のスキルが十分でなくても取得可能です。したがって、チーフアカウンタントを持っているから、経理知識が十分とい勘違いされるケースが非常に多いです。この理解は正しくありません。

 このチーフアカウンタントという資格は以下のようにして取得します。

経済学部など会計に関する大学や専門学校を卒業
3年程度の年の実務経験

を経れば受験資格が得られます。受験する前に半年程度、夜間の専門学校でチーフアカウンタント養成コースを受講しなければなりませんが、このコースの受講料は 200 万ドン程度(1万円程度)です。そして、試験の難易度は高くありません。

 したがって、ベトナム赴任している社長様や管理者は、採用する人が、本当のスキルがあるのか?ということを見極める必要があります。

 日本においては、このような制度はありません。

会計年度について

 原則は、12月末です。しかし、3月、6月、9月も会計年度として選択することができます。3の倍数と覚えておくといいでしょう。

 日本の場合、決算期末について自由に選択できます。

外部会計監査について

監査の適用の有無
 日系企業のような外資企業は、原則として、1年に1度の独立監査法人による会計監査を受けなければいけません。

 どんなに小さな企業でも、“外資”となった場合、原則として、外部の会計監査が必要となっています。(そのほかベトナム上場している会社や保険会社、金融機関等も監査が必要になります)

 逆にいうと、ベトナムローカル企業のほとんどは監査を受ける必要がありません。

 ベトナムに進出する企業には中小企業も数多く、日本では会計監査が必要のない会社が大半です。したがって、ベトナム進出された際に会計監査が必要だと聞いてびっくりされるケースもあります。

 日本の場合は、外資企業がすべて監査受ける必要性はありません。

 監査は、会社法監査と金融商品取引法監査に分類され、一定の条件を満たす場合に監査が必要となります。(厳密には他の法定監査もあります)

外部監査の時期の例外
 しかし、初年度の会計期間が、3か月未満の場合は、初年度と翌年度を合算した15か月を対象として監査を受けることができます。ただし、この場合は事前に初年度の会計期間を財務省に届ける必要があります。

 例えば、12月決算の会社が、2020年10月に設立した場合、最初の決算は2020年12月のように思えます。しかし、2020年10月から2021年12月の15ヶ月間を対象に会計期間として監査を受けることになります。

 設立したばかりの時期は、準備が主な活動です。3か月程度は、ビジネス活動が実質的に行われていないだとうといった趣旨のようです。

会計監査を完了させ報告書を提出する日付
 ベトナムに進出している外資企業は、会計年度末から90日以内に独立の監査人による監査を完了させなければいけません。

 余談ですが、多数の日系企業が12月決算を選択しています。そのため、監査法人の繁忙期は1月から3月となります。

 もし、6月や9月などの、12月以外を決算月にすると、監査法人の繁忙期を避けることができます。

 日本の場合は、前述したように、会社法と金商品取引法と2つにわけて考えることができます。

 会社法の場合には会社法で定められている日付です。金融商品取引法の場合は決算から3か月までとされています。

機能通貨について

認められる通貨
 原則として、ベトナムドンにて記帳します。例外として、USDのような外貨での記帳も可能です。例えば、海外へ輸出が中心であり、通貨のほとんどでUSDを利用している場合には、USDを利用して記帳することも可能です。

 そのため、EPE(輸出加工企業)においては、外国通貨を利用している企業様が多いです。なぜなら、海外から輸入して、製造いし海外へ輸出しており、主要な取引が外貨だからです。

 しかしながら、財務諸表を関連当局(財務省等)に提出する場合には、ベトナムドンに換算しなければいけません。

 日本の場合は、円で財務諸表を作成し報告することが基本です。

金額の単位について
 ベトナムドンの金額単位は、大きいです。500,000ドンは約2,500円です。そのため、日本人駐在員様からするとベトナムの財務諸表が見にくいという点があります。大きな企業の財務諸表であれば、ベトナム人の方でも理解するのが難しいと思います。

 財務諸表の数値の単位が9桁、12桁、15桁以上ある場合には、千、百万、十億の数値を利用することも可能です。

 日本も同様です。千円単位や百万円単位で、財務諸表を公表している企業もあります。

会計帳簿に関する言語

 原則は、ベトナム語である必要があります。外国語で記載する場合には、ベトナム語も併記しなければいけません。例えば、総勘定元帳の備考欄については、外国語と併記しているケースもあります。

 したがって、会計帳簿及び財務諸表等の会計に関する書類には、すべてベトナム語が必要となります。

 日本の場合、外部に公表される財務諸表については、日本語であることが必要です。

どのような会計書類を作成し保管する必要があるのか?

 これは、財務諸表等とその他の書類と分類されます。

主要な財務諸表について
貸借対照表
損益計算書
キャッシュフロー

注記
その他種類

です。

 財務諸表のひな形ついては、通達No. 200/2014/TT-BTC(以下、通達)の添付に添付されています。企業はこれに従って、財務諸表を作成します。

上記、財務諸表以外の書類
 勘定明細、総勘定元帳、補助元帳、仕訳帳、利益計画、契約書や税金に関する文書など多岐にわたります。このような細かな書類については、会社が任意で定めることができます。また、通達においてはテンプレートが提供されています。その雛形には、購入リストや支払い伝票や入金伝票、前払い申請書等が含まれています。

 日本と大きな違いはありませんが、有価証券報告書は、ビジネスのスキームや事業リスクの情報が含まれているのでより範囲が広いと言えます。

会計に関する文書の保管期間

 これは、文書の種類に応じて3つに分類されます。

5年
10年
永久保存

です。それぞれ解説していきます。

会計帳簿や財務諸表に直接的に関連しない書類
 これは、5年間の保管が必要になります。例えば、支払いメモなどのような書類です。

会計帳簿や財務諸表に直接的に関連する書類
 これは、10年間の保管が必要になります。財務諸表はもちろんのこと、勘定明細、総勘定元帳、仕訳帳、内部監査報告書についても10年間の保管が必要です。

永久に保管しなければならない書類
 重要な書類については、永久に保管しなければなりません。例えば、歴史的、国家安全、国防文書のような文書が想定されているようです。

 日本は、税法上、原則7年(繰越欠損金がある場合は9年)とされています。会社法上は10年とされています。

会計に関する書式・フォーマット

 これは、紙ベースと電子ベースに分類されます。会社は、紙ベースではなく、電子的に会計に関する文書(電子帳簿)を保管することも可能です。

 ただし、電子帳簿であっても、税務調査で求められるような場合は、紙で打ち出される必要があるようです。実務上は、どのような会計に関する書類も、紙面で残したいというチーフアカウンタントが多いと感じます。

 日本の場合、ペーパーレス化が進み、電子帳簿は可能となっています。必要に応じて会計ソフトから紙に打ち出すという流れだと思います。

会計に関する書類への署名

 すべての会計に関する記録(財務諸表等)について、適切な人物による署名が必要になります。これは、紙であっても電子的であっても適切な署名が求められます。

 具体的には、チーフアカウンタント及び社長の署名が必要になります。

ベトナム会計のまとめ

 まとめの表にすると以下の通りです。

ベトナム 日本
勘定科目コード 定められている 自由
チーフアカウンタント 制度としてある ない
会計年度 3の倍数 自由
外部会計監査 外資系義務あり 外資系だからといって義務なし
機能通貨 原則、ベトナムドン
例外として外貨あり
日本円
会計帳簿に関する言語 ベトナム語 日本語(自由)
会計書類の範囲 財務諸表とその他の書類 基本同様
文書の保管期間 5年、10年、永久 10年、7年
書式 紙面及び電子帳簿 同様
署名 必要 ベトナムほど厳しくない


 本日は、ベトナム会計の特徴についてまとめさせて頂きました。日本の会計制度と異なる部分について理解して頂ければより、理解が深まると思います。

 ベトナム駐在員様は、経営管理全体を見ることがほとんどですので、ベトナム会計の知識を理解しておくと、経営管理のレベル向上のためにも便利です。

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投稿者紹介

Manabox Vietnam 菅野 智洋
Manabox Vietnam 菅野 智洋
プロフィール:すげの ともひろ(海外歴8年のグローバル会計士)

日本国公認会計士/ 海外子会社経営管理専門家 / ブログライター/日本グローバル経営管理アドバイザー理事

2016年より、マナボックスベトナムに出資し、経営として参画。日系企業のベトナム進出から進出後の経営管理業務を支援しています。また、ブログや動画で日系企業のよくある悩みを解決するためのコンテンツをほぼ毎日発信しています。https://manabox-global.com/

健康とメンタルのたね、2019年から、サウナ(水風呂メイン)に通い、2020年の12月からは、瞑想も始めました。

具体的な例として、日本人社長様が、財務諸表から、会社の実態を読み取り、正しく問題を認識し、行動を起こすことにより未来を変えていくことを支援させて頂いております。

マナボックスはベトナムは設立2015年以来、経理の試験なども含め、述べ250社以上を支援させて頂きました。

22歳の時、「なにか必死になって難しいことに挑戦したい」という思いから公認会計士を目指して勉強を開始しました。英弁文学部であったため、全くのゼロの知識からのスタート。

27歳の2006年の時、公認会計士試験に合格。グローバルの大手会計事務所(PwC)に入所。日系の製造業や外資系の大手医療の会社の監査や内部統制アドバイザリー業務で支援。

2013年より、インドの日系の製造業(自動車関係)の財務責任者として3年ほどインド赴任。そこで、不正などいろんな問題に直面。海外子会社管理を支援したいという想いが強くなる。

私は、海外子会社の社長様を、ファイナンスという点で支援することにより「あなたの会社の未来を変える!」という事を全力で支援していきます。

利益がでないけどどこに問題があるかわからない。問題点を財務諸表から読み取りたい。

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そんな悩みを持った、海外で頑張る!社長様に対して、

「あるべき経営管理」「正しい経営」

を一緒になって考え、徹底した初心者目線でサポートをさせて頂きます。

経営管理のスキルの種類は多岐にわたります。基礎から応用までです。これらを体系的に理解、身に着けることにより、可能となります。

また、激動の時代なので、変化を恐れず、ITを味方にして、人間にしかできない価値を提供できるような会社にしていきたいです。