2019年11月20日にベトナムの国会は労働法の改正(45/2019/QH14)を決議しこの法律は2021年1月1日より施行されます。
ここでは、ベトナム改正労働法と旧労働法を比較しながら2021年1月より施工される改正法によって主に具体的にどういった変更があるのかを見ていきます。旧労働法と改正労働法の条文を記載し、重要な変更点には黄色でマークを付けておりますので、参考になさってください。また、外国人の労働許可証に対しての具体的な変更点も解説します。
目次
- 1 労働契約の定義の変更(改正労働法 第13条)
- 2 労働契約の形式の変更(改正労働法 第14条)
- 3 労働契約の種類の変更(改正労働法 第20条)
- 4 試用期間に関する変更(改正労働法 第25条、第27条)
- 5 雇用者(使用者)が労働契約を一方的に解除する権利に関する変更(改正労働法 第36条)
- 6 賃金テーブルに関する変更(改正労働法 第93条)
- 7 外国人への賃金支払いに関する変更(改正労働法 第95条)
- 8 賃金の支払い形式に関する変更(改正労働法 第96条)
- 9 残業時間の上限に関する変更(改正労働法 第107条)
- 10 勤務中の休憩時間に関する変更(改正労働法 第109条)
- 11 祝日に関する変更(改正労働法 第112条)
- 12 就業規則に関する変更(改正労働法 第118条)
- 13 懲戒解雇に関する変更(改正労働法 第125条)
- 14 ベトナムで勤務する外国人労働者に関する変更(改正労働法 第151条、第154条、第155条)
- 15 定年退職の年齢に関する変更(改正労働法 第169条)
労働契約の定義の変更(改正労働法 第13条)
旧労働法においては「労働契約とは、賃金が支給される仕事、労働条件、労使関係における当事者各々の権利と義務に関する被雇用者と雇用者との間の合意である。」(旧労働法 第15条)とのみ記載されているのに対して改正労働法は、「労働契約とは,報酬,賃金を得られる業務,労働条件,労使関係における労働者と使用者の権利および義務に関する労働者と使用者の合意である。両当事者が異なる名称による合意をしたが,その内容が報酬,賃金を得られる業務及び一方当事者の管理,運営,監察に関する表現であれば,それは労働契約と看做される。」(改正労働法 第13条)と明記されています。
これは実質的に労働契約である契約は労働契約と明記されていなくても労働契約とみなすことで労働者保護を強化するものです。Grabの運転手は従業員にあたるか、などの論争に影響を与える可能性があると考えられます。
労働契約とは、賃金が支給される仕事、労働条件、労使関係における当事者各々の権利と義務に関する被雇用者と雇用者との間の合意である。
1.労働契約とは,報酬,賃金を得られる業務,労働条件,労使関係における労働者と使用者の権利および義務に関する労働者と使用者の合意である。両当事者が異なる名称による合意をしたが,その内容が報酬,賃金を得られる業務及び一方当事者の管理,運営,監察に関する表現であれば,それは労働契約と看做される。
労働契約の形式の変更(改正労働法 第14条)
改正労働法では、「電子取引に関する法令の規定に従った書面による労働契約と同様の価値を有するデータメッセージの形式によって,電子的方式を通じて締結することができる」との一文が追加されました。これにより、Emailなどの電子的手段による労働契約は書面による労働契約と同様の効力を有することとなりました。また、旧法においては「期間が3ヵ月未満の一時的な仕事の場合、口頭で労働契約を締結することができる」とされていたものが、改正法においては、「1 か月未満の期間の契約については口頭で労働契約を締結することができる」となり、口頭での契約が認められるのは3か月未満から1ヵ月未満に短縮しています。
1. 労働契約は文書によって締結、2 部が作成され、被雇用者と雇用者が1部ずつ所持しなければならない。ただし本条第2項で規定する場合を除くものとする。
2. 期間が3ヵ月未満の一時的な仕事の場合、口頭で労働契約を締結することができる。
1.労働契約は,この条2項が規定する場合を除き,書面により締結し,書面は2通で労働者が1通を保持し,使用者が1通を保持しなければならない。
労働契約は,電子取引に関する法令の規定に従った書面による労働契約と同様の価値を有するデータメッセージの形式によって,電子的方式を通じて締結することができる。
2.両当事者は,この法典の18条2項,145条1項a号及び 162条1項が規定する場合を除き,1 か月未満の期間の契約については口頭で労働契約を締結することができる。
労働契約の種類の変更(改正労働法 第20条)
旧法では、①無期限労働契約、②有期限労働契約、③季節的な業務、又は特定業務を履行するため12ヶ月未満の有期限労働契約、の3種類規定されていましたが、改正労働法では③の季節的な業務、又は特定業務を履行するため12ヶ月未満の有期限労働契約の記載が廃止され「36か月を超えない期間で両当事者が契約の期限,契約の効力終了時点を確定する,有期限労働契約」(改正労働法 20条)に統一されました。この結果、「季節的な業務、または特定業務」でなければ締結できなかった12か月未満の有期限労働契約が締結できるようになったと考えられます。
1. 労働契約は次のいずれかの形式で締結されなければならない。
a) 無期限労働契約
無期限労働契約とは、両当事者が契約の効力を終了する期限及び時期を確定しない契約である。
b) 有期限労働契約
有期限労働契約とは、両当事者が契約の効力を終了する期限及び時期を、満12ヵ月から36ヵ月までの期間と確定した契約である。
c) 季節的な業務、又は特定業務を履行するため12ヶ月未満の有期限労働契約
1.労働契約は,以下の各種類の一つに従って締結されなくてはならない:
a) 両当事者が契約の期限,契約の効力終了時点を確定しない,無期限労働契約;
b) 契約の効力発生時点から36か月を超えない期間で両当事者が契約の期限,契約の効力終了時点を確定する,有期限労働契約
試用期間に関する変更(改正労働法 第25条、第27条)
1.契約書に関する変更
旧法においては、「試用期間での業務が満足なものであった場合、雇用者は被雇用者と労働契約を締結」と記載されており、試用期間契約書と労働契約書は別のものとして運用されていましたが、改正法においては「締結済みの労働契約に試用の合意がある場合,労働者はその労働契約を引き続き履行」(改正労働法 27条)と明記されており、労働契約書の中に試用期間契約書を含むことを認めています。なお、「試用契約を締結していた場合は労働契約を締結」とも明記されているため、試用期間契約書と労働契約書を個別の契約書として運用することは引き続き認められます。
1. 試用期間での業務が満足なものであった場合、雇用者は被雇用者と労働契約を締結しなければならない。
1.試用期間終結の際,使用者は試用の結果を労働者に通知しなければならない。
試用の結果が使用者の要求に達していた場合で,締結済みの労働契約に試用の合意がある場合,労働者はその労働契約を引き続き履行し,試用契約を締結していた場合は労働契約を締結しなければならない。
試用の結果が使用者の要求に達していない場合は,締結済みの労働契約又は試用契約を終了する。
2.期間に関する変更
旧法では、試用期間の最長は①専門技術程度を要する職位は60日、②事務補助職の専門技術程度の職位の場合は30日、③その他の業務の場合は6営業日(旧労働法 第27条)と定められていましたが改正法では新たに管理者についての試用期間が新設され、管理者に対する試用期間は180日(他の職位については変更なし)(改正労働法 第25 条)となっています。
試用期間は、業務の性質と複雑さの程度に基づくが、一つの業務に対して一回のみ試用期間が設定でき、次の条件を保証しなければならない。
1. 短期大学以上の専門技術程度を要する職位の業務の場合は、60日を超えない。
2. 職業訓練学校、専門学校、技術を持つワーカー、経験を持つ事務補助職の専門技術の程度を要する職位の業務の場合は、30 日を超えない。
3. その他の業務の場合は6営業日を超えない。
試用期間は,業務の性質,複雑さの程度に基づいた両当事者の合意によるが,一つの業務に対して 1 回のみ試用ができ,以下の条件を保証する。
1.企業法,企業における生産,経営に対して投資する国家資本の管理,使用の法律に従った企業の管理者の業務については,180日を超えない。
2.短期大学16以上の専門,技術水準を必要とする職位の業務については 60 日を超えない。
3.中級の専門,技術水準を必要とする職位の業務,技術工員,事務職員については 30 日を超えない。
4.その他の業務の場合は 6 日を超えない。
雇用者(使用者)が労働契約を一方的に解除する権利に関する変更(改正労働法 第36条)
旧法においては、雇用者からの労働契約の一方的な解雇は①被雇用者が、頻繁に労働契約に定めた業務を遂行しない場合、②被雇用者が、病気、事故で連続して12ヶ月(無期限労働契約の場合)、6ヶ月(有期限労働契約の場合)、契約期間の1/2以上(12ヶ月未満の季節的業務、又は特定業務の労働契約の場合)にわたり治療を受けたが、労働能力を回復できない場合、③ 天災、火災又は政府が規定するその他の不可抗力の理由により、雇用者が全ての克服措置を実行したが、やむを得ず行う生産規模の縮小及び人員削減、④被雇用者が兵役など旧法33条に該当する事由で労働契約の一時的履行を停止した後その期限が終了して15日以内に戻ってこないとき、に限定されていました。
改正労働法においては、①の規定が「使用者規則における業務完成水準評価基準に従って確定される業務を常時完成させない」場合と、具体的に明記されました。また、⑤労働者が自らの意思で5日以上連続で正当な理由なく仕事をしない場合、⑥定年退職、⑦労働者が「氏名,生年月日,性別,居住地,学問水準,職業能力水準,健康状態の確認及び使用者が要求する労働契約締結に直接関連するその他の問題に関する情報を使用者に対して誠実に提供」(改正労働法 第16条)していなかった場合も雇用者からの労働契約の一方的な解雇として追加されています。
1.下記の場合、雇用者は一方的に労働契約を解除する権利を有する。
a) 被雇用者が、頻繁に労働契約に定めた業務を遂行しない場合
b) 被雇用者が、病気、事故で連続して12ヶ月(無期限労働契約の場合)、6ヶ月(有期限労働契約の場合)、契約期間の1/2以上(12ヶ月未満の季節的業務、又は特定業務の労働契約の場合)にわたり治療を受けたが、労働能力を回復できない。 被雇用者の労働能力が回復した際は、雇用者は労働契約の継続を検討する。
c) 天災、火災又は政府が規定するその他の不可抗力の理由により、雇用者が全ての克服措置を実行したが、やむを得ず生産規模の縮小及び人員削減を行う。
d) 被雇用者が、本法第33条で規定する期限後に欠勤する。
1.使用者は,以下の場合に労働契約の解約の権利を有する:
a) 労働者が,労働契約に従って,使用者規則における業務完成水準評価基準に従って確定される業務を常時完成させない。業務完成水準評価規則は使用者が制定するが,事業所の労働者代表組織がある職場については事業所の労働者代表組織の意見を参考にしなければならない;
b) 労働者が,病気,事故で,連続して12 か月(無期限労働契約の場合),6 か月(12か月から36か月の有期限労働契約の場合),労働契約期間の1/2を超える期間(12か月未満の有期労働契約の場合),治療を受けたが労働能力を回復しない。健康が回復した場合,使用者は労働者と引き続き労働契約を締結するために調査を行う;
c) 自然災害,火災,危険な疫病,権限を有する国家機関の要求に従った損害又は移住,生産・経営の縮小があり,使用者が既に克服方法を探求したが,依然として労働場所を減らすことを強いられる;
d) この法典31条が規定する期間の後に労働者が職場に来ない;
đ) 労働者が,この法典169 条が規定する定年退職年齢となった。但し,異なる合意がある場合を除く;
e) 労働者が,自らの意思で,5 日以上連続で正当な理由なく仕事をしない。
g) 労働者が,この法典16 条2項の規定に従った誠実な情報を提供せず,労働者の採用に影響を与える。
2.労働者は,氏名,生年月日,性別,居住地,学問水準,職業能力水準,健康状態の確認及び使用者が要求する労働契約締結に直接関連するその他の問題に関する情報を使用者に対して誠実に提供しなければならない。
賃金テーブルに関する変更(改正労働法 第93条)
旧法においては「作成した賃金テーブル及び賃金表を雇用者の所在地の労働に関する県レベルの国家管理機関へ送付」(旧労働法 第93条)しなければならないとされていました(ただし、「政令 121/2018/NĐ-CP」により雇用者数が10名以下の場合は免除)が、改正労働法においてはこの条文が削除されています。これにより、雇用人数にかかわらず管轄労働当局への提出は不要となりました。なお、賃金テーブルの作成自体は引き続き義務付けられています。
1.政府が規定した賃金テーブル、賃金表及び労働基準量の作成原則に基づき、雇用者は募集、労働の使用、労働契約の給料交渉および給料支払いの根拠とするために、賃金テーブル、賃金表及び労働基準量を作成する責任を負う。
2.賃金テーブル、賃金表及び労働基準量を作成する際、雇用者は事業所の労働組合の代表部より意見を聴取しなければならないほか、作成した賃金テーブル及び賃金表を雇用者の所在地の労働に関する県レベルの国家管理機関へ送付し、実施前に事業所で公表・公開しなければならない。
1.使用者は,労働者採用,労働契約内に規定された業務又は職名に従った賃金額の合意及び労働者への賃金支払いの根拠とするために,賃金テーブル,賃金表の作成及び労働基準の設定を行わなければならない。
2.労働基準は,通常の労働時間を延長することなく多数の労働者が実施することができる平均水準であり,正式な発行の前に試験的適用がされなければならない。
3.使用者は,賃金テーブル,賃金表の作成及び労働基準の設定をする際に,事業所における労働者代表組織がある職場については,事業所における労働者代表組織の意見を参考にしなければならない。
賃金テーブル,賃金表の作成及び労働基準の設定は,実施する前に職場で公表,公開しなければならない。
外国人への賃金支払いに関する変更(改正労働法 第95条)
旧法においては、駐在(居留)していない者及び駐在外国人への給与及び給与補助支払いを除きベトナムドンでの支払いが義務付けられていましたが、改正法では「労働者がベトナムにおける外国労働者である場合は外貨で支払うことができる」(改正労働法 第95条)とされました。
(旧)労働法第90条1項及び2項に定められた給与は以下の通り規定される。
3. 労働契約書に記載される給与額及び支払われる給与はベトナムドンで規定される。海外為替に関する法律の規定に従う、駐在(居留)していない者及び駐在外国人への給与及び給与補助支払いはその限りではない。
2.労働契約内に規定された賃金及び労働者に支払う賃金はベトナムドンによるが,労働者がベトナムにおける外国労働者である場合は外貨で支払うことができる。
賃金の支払い形式に関する変更(改正労働法 第96条)
旧法では、「銀行口座を通じて支払う場合、雇用者は口座の開設と維持に関連する各種手数料について、被雇用者と合意しなければならない」(旧労働法 第94条)とされていましたが、改正法では「使用者は口座開設及び賃金送金に関連する各種費用を支払わなければならない」(改正労働法 第96条)となり、銀行口座開設と維持にかかる費用は雇用者の負担となることが明記されました。
2. 賃金は、現金または銀行に開設された被雇用者の個人口座を通じて支払われる。銀行口座を通じて支払う場合、雇用者は口座の開設と維持に関連する各種手数料について、被雇用者と合意しなければならない。
2.賃金は,現金又は銀行に開設した労働者個人の口座振り込みで支払われる。
銀行に開設した労働者個人の口座振り込みで賃金が支払われる場合,使用者は口座開設及び賃金送金に関連する各種費用を支払わなければならない。
残業時間の上限に関する変更(改正労働法 第107条)
旧法では1ヵ月30時間を超えてはならない(旧労働法 第106条)とされた残業時間ですが、改正法では1ヵ月40時間(改正労働法 第107条)まで認められるようになりました。また、1年間の残業時間の上限は原則200時間を維持しつつ、「繊維,縫製,皮革,靴,電気,電子,農産物加工,林業,塩業,水産の製品の生産,輸出加工」(改正労働法 第107条3項)などは例外として1年間の残業時間の上限を300時間としています。
2. 雇用者は、次に掲げる条件を十全に満たした際に、被雇用者を時間外労働させることができる。
a) 被雇用者の同意を得ること。
b) 被雇用者の時間外労働の時間数は、1日の通常勤務時間の50%を超えてはならず、週当たり勤務時間の規定を適用している場合は、通常の勤務時間と時間外労働の総時間数が1日12時間を超えてはならず、1カ月で30 時間、1 年で200時間を超えてもならない。ただし、政府が規定する特別な場合は、1年で300時間を超えない時間外労働が認められる。
c) 1カ月間に時間外労働の日が多く続いた場合、雇用者は被雇用者が休めなかった期間の代休を取得できるよう人員を配置しなければならない。
2.使用者は,以下の要求を全て満たす場合に,労働者を時間外勤務させることができる。
a) 労働者の同意を得なければならない;
b) 労働者の時間外勤務時間は1日における通常の勤務時間の50%を超えないことを保証する;1週間あたりの通常勤務時間の規定を適用している場合は,通常の勤務時間と時間外勤務時間の合計が1日あたり12時間を超えない;1 か月あたりで40時間を超えない;
c) この条3項が規定する場合を除き,労働者の時間外勤務時間が1年あたり 200時間を超えないことを保証する
3.以下の産業分野,業種,業務又は場合の一つにあたる場合,使用者は1年間に300時間を超えない時間外労働を労働者にさせることができる;
a) 繊維,縫製,皮革,靴,電気,電子,農産物加工,林業,塩業,水産の製品の生産,輸出加工;
b) 電気の発電,供給,電気通信,石油精製; 給排水;
c) 高度の専門,技術水準が求められる業務で,労働市場が適時に十分な労働者を供給できないものを解決する場合;
d) 原料,製品の適切な時期により,又は事前に予想できない客観的要素により緊急で,遅延させることができない業務を解決する場合,又は天候不順,自然災害,火災,妨害,電力不足,原料不足,生産チェーンの技術的事故により発生する業務を解決する場合;
đ) 政府が規定するその他の場合。
4.この 3 項の規定に従って時間外勤務を行う場合,使用者は省級人民委員会に属する労働に関する専門機関に書面で通知しなければならない。
5.政府はこの条の詳細を規定する。
勤務中の休憩時間に関する変更(改正労働法 第109条)
旧法では「勤務時間として計算」される30分の休憩をとることができるとされていましたが、改正法ではこの部分が削除されています。これにより、休憩時間を勤務時間として計算する必要は無くなったと考えられます。なお、労働者が6時間以上連続の勤務でかつ交代制である場合は引き続き休憩時間も勤務時間として計算されます。
1.本法第104条の規定に基づいて8時間、又は6時間連続で勤務する被雇用者は、勤務時間として計算される、少なくとも30分の休憩を取ることができる。
2.深夜労働の場合、被雇用者は勤務時間として計算される、少なくとも45分の休憩を取ることができる。
3.本条第 1 項及び第 2 項で規定する休憩時間以外、雇用者は短い休憩時間を規定し、それを就業規則に記入する。
1.この法典105条が規定する勤務時間に従って1日あたり6時間以上勤務する労働者は,深夜勤務でない場合は少なくとも30分連続で,深夜勤務の場合は少なくとも45分連続で休むことができる。
労働者が6時間以上連続の交代制で勤務する場合,勤務中の休憩時間は勤務時間として計算される。
2.この条1項が規定する場合以外に,使用者は短時間の休憩を労働者に与え,それを就業規則に規定する。
祝日に関する変更(改正労働法 第112条)
旧法においては、祝日は①陽暦の正月:1日(陽暦の1月1日)、②旧正月テト:5日、③戦勝記念日:1日(陽暦の4月30日)、④メーデー:1日(陽暦の5月1日)、⑤建国記念日:1日(陽暦の9月2日)、⑥フン王忌日:1日(陰暦の3月10日)、と規定されていました。改正法においては③に「建国記念日:2日(陽暦9月2日とその前又は後の1日)」と「その前又は後の1日」が追加され、祝日が1日増えています。この改正により労働法上のベトナムの年間祝日は11日間となります。
1.被雇用者は以下の祝日、正月休みに有給で勤務を休むことができる。
đ) 建国記念日:1日(陽暦の9月2日)
1.労働者は,以下の祝日,旧正月に有給で休むことができる:
đ) 建国記念日:2日(陽暦9月2日とその前又は後の1日)
就業規則に関する変更(改正労働法 第118条)
旧法では就業規則の作成は「10 名以上の被雇用者」とされていましたが、改正法では「使用者は就業規則を発行しなければならず」となり10名以下の雇用人数であっても就業規則を制定しなければならない旨定められました。
1.10 名以上の被雇用者を使用する雇用者は、文書による就業規則を所持しなければならない
1.使用者は就業規則を発行しなければならず,10 人以上の労働者を使用する場合は,就業規則は書面でなければならない。
懲戒解雇に関する変更(改正労働法 第125条)
改正法において、「就業規則に規定されている職場でのセクシャルハラスメント」(改正労働法 第125条)行為が懲戒解雇できる項目として追加されています。なお、労働者がセクシャルハラスメントにあった場合に即刻会社を辞職できる権利も「労働者の労働契約の解約の権利」(改正労働法 35条)に引き続き記載されています。
雇用者は以下の場合に解雇処分を適用できる。
1. 被雇用者が窃盗、汚職、賭博、故意に人を傷つける行為、職場内での麻薬の使用、雇用者の経営・技術上秘密の漏洩、知的所有権の侵害行為を行い、雇用者の資産、利益に重大な損害をもたらす行為、または特別重大な損害をもたらす恐れがある行為を行う場合。
解雇による規律処分形式は,労働者が以下の場合に該当する場合に適用される:
1.労働者が職場で,窃盗,横領,賭博,故意に基づく傷害の惹起,麻薬使用をする;
2.労働者が,使用者の営業機密,技術機密の漏洩,知的所有権の侵害行為を行う,使用者の財産,利益に関して重大な損害を惹起する行為を行う,若しくは特別に重大な損害惹起のおそれがある行為を行う,又は就業規則に規定されている職場でのセクシャルハラスメントを行う;
d) 職場でのセクシャルハラスメント;
ベトナムで勤務する外国人労働者に関する変更(改正労働法 第151条、第154条、第155条)
旧法においては第22条で労働契約の種類が定められているのみで、ベトナムで勤務する外国人労働者については明確な規定がありませんでした。旧法においては「両当事者が有期限契約である新たな労働契約を締結しようとする場合も、もう一回のみ締結することができる。その後、被雇用者が引き続き就労する場合は、無期限労働契約を締結する必要」(旧労働法 第22条)と明記されており、外国人が無期限労働契約を締結することと外国人の労働許可証の期限との兼ね合いが指摘されていました。改正法において、法律上不鮮明だったこの点が「ベトナムで勤務する外国人労働者との労働契約期間は,労働許可書の期限を超過することはできない」(改正労働法 第151条)と明文化されています。「労働許可書の期間は最大で2年であり,最大2年間の延長を1回できるのみ」(改正労働法 第155条)とも規定されており、労働許可書を1度更新し更新した労働許可書が期限を迎えた場合は、労働許可書を再度取り直すため1度出国する必要があるのではないかと考えられています。この辺りは、実際に運用が始まらないと不明な点が多いです。
また、「ベトナム人と結婚して,ベトナム領土で生活する外国人」(改正労働法 第154条)は労働許可証の発給を受けなくてもベトナム国内で労働できることとなりました。
2. 本条第 1 項 b、c で規定する労働契約の期限が満了しても、被雇用者が仕事を辞めず引き続き就労する場合、労働契約の期限が切れた日から 30 日以内に両当事者は新たな労働契約を締結しなければならない。新たな労働契約を締結しない場合、本条第 1 項 b に規定された既存の労働契約は無期限労働契約となり、本条第 1 項 cに規定された既存の労働契約は、期限 24 ヶ月の有期限労働契約となる。
両当事者が有期限契約である新たな労働契約を締結しようとする場合も、もう一回のみ締結することができる。その後、被雇用者が引き続き就労する場合は、無期限労働契約を締結する必要がある。
2.ベトナムで勤務する外国人労働者との労働契約期間は,労働許可書の期限を超過することはできない。ベトナムで外国人労働者を使用する場合,両当事者は有期限労働契約を多数回締結する合意をすることができる。
8.ベトナム人と結婚して,ベトナム領土で生活する外国人。
労働許可書の期間は最大で2年であり,最大2年間の延長を1回できるのみである。
定年退職の年齢に関する変更(改正労働法 第169条)
旧法において定年は男性満60歳、女性満55歳(旧労働法 第187条)とされていました。改正法においては、「通常の労働条件の労働者の定年退職年齢は,男性労働者は2028年までに満62歳に,女性労働者は2035年までに満60歳になるスケジュールに従って調整される」(改正労働法 第169条)とし、「2021年から,通常の労働条件の労働者の定年退職年齢は,男性労働者につき満60歳と3か月,女性労働者につき満55歳と4か月になる;その後,1年経過するごとに,男性労働者につき3か月,女性労働者につき4か月が追加されていく」と定義されています。
1. 社会保険に関する法律の規定に基づき、社会保険加入期間の条件を満たした満60歳の男性と満55歳の女性の被雇用者は、定年後の年金の支給を受けることができる。
2.通常の労働条件の労働者の定年退職年齢は,男性労働者は2028年までに満62歳に,女性労働者は2035年までに満60歳になるスケジュールに従って調整される。
2021年から,通常の労働条件の労働者の定年退職年齢は,男性労働者につき満60歳と3か月,女性労働者につき満55歳と4か月になる;その後,1年経過するごとに,男性労働者につき3か月,女性労働者につき4か月が追加されていく。
以上、2021年1月1日から施行されるベトナム改正労働法の主な変更点となります。
労働法のベトナム語原文とJICAの作成した日本語訳は下記をご参照ください。この記事も下記の条文を引用させて頂いております。
2019年改正、2021年施行ベトナム労働法(45/2019/QH14) ベトナム語原文
https://thuvienphapluat.vn/van-ban/lao-dong-tien-luong/Bo-Luat-lao-dong-2019-333670.aspx
2019年改正、2021年施行ベトナム労働法 日本語訳
https://www.jica.go.jp/project/vietnam/021/legal/ku57pq00001j1wzj-att/labor_law_2019.pdf
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