カンボジア史(2) ヒンドゥー教の神 ヴィシュヌ
はじめに
ヒンドゥー教の神の中でおさえておきたいのは、やはり『ヴィシュヌ』だと思います。ヴィシュヌは三神一体論(トリムルティ)では最高神の三つの神格の一つとされており、世界の維持と繁栄を司っているので維持神とされています。
ビシュヌは、メール山の中心にあるヴァイクンタに住んでおり、ガルダと呼ばれる鳥の王であるヴァーハナに乗っています。奥さん(神妃)はラクシュミーです。
一般的には、4本の腕を持ち、右には円盤状のチャクラムと棍棒(どちらも武器)、左には法螺貝(パンチャジャナ)と蓮華を持つ男性の姿で描かれることが多いです。
アヴァターラ
アヴァターラとは化身のことで、ヴィシュヌが地上に降り立つ時に化身となりました。中でも下記にあげる10個の化身を総じてダシャヴァターラと呼ばれます。ちなみにヴィシュヌが地上に降り立つ際に化身となるのは人に限ったことではありませんでした。
1.マツヤ
第一のアヴァターラで見た目は魚。太陽神スーリヤの息子であるマヌ王に世界中が大洪水に教われることを預言し、船にあらゆる種子と7人の賢者を乗せるように言って姿を消しました。
2.クールマ
第二のアヴァターラで見た目は亀。乳海撹拌の際に作業を手伝いました。
3.ヴァラーハ
第三のアヴァターラで見た目は猪。大地が海の底へ沈められそうになった時に、自らの牙で支え沈められるのを阻止しました。
4.ナラシンハ
第四のアヴァターラはライオンの獣人です。ほぼ無敵の力を得ていたアスラ族の王 ヒラニヤカシプを退治しました。
5.ヴァーマナ
第五のアヴァターラは矮人(わいじん:背が低い人、ドワーフや小人など)です。アスラ族の王 マハーバリが世界を統治していた時、マハーバリとの間で三歩歩いた分の土地を譲り受ける約束を交わしました。実際に歩く事になった時に身体を巨大化させ、1歩目を大地、2歩目を天、3歩目でマハーバリの頭を踏んで地底世界へと追いやっています。
6.パラシュラーマ
第六のアヴァターラは斧を持ったラーマ(ラーマーヤナの主人公)。クシャトリア族の世界支配から神々や人々を守りました。
7.ラーマ
第七のアヴァターラはラーマ。インドの叙事詩であるラーマーヤナの主人公。魔王 ラーヴァナから人類を救った英雄とされています。
8.クリシュナ
第八のアヴァターラで叙事『マハバーラタ』に出てくる英雄。
9.ゴーダマ・ブッダ
第九のアヴァターラはブッダ。ヴェーダ聖典をアスラから遠ざけるために仏教を広めました。
10.カルキ
第十のアヴァターラで白馬に乗った英雄。世界が滅びる時に現れ、新たな世界を築くとされています。