ベトナム労働法(総論)

ベトナムの最初の労働法は、1992年ベトナム社会主義共和国憲法に基づき、国会により公布され1994年6月23日に施行されました。

 

ここで紹介するベトナムの労働法は、2012年6月18日に発布され、2013年5月1日より施行されたNo10/2012/QH13(改正労働法)を取り扱います。また労働法の中でも特に重要な項目(「雇用」「労働契約」「賃金」「勤務時間・休憩時間」「社会保険」など)においては、別記事にて詳細を説明致します。その際、2012年6月18日以降に公布された改正労働法施行細則などを合わせて紹介致します。日本語全文訳はJETROのウェブサイトをご参照ください。

 

2019年改正(2021年施行)の改正労働法(45/2019/QH14)と労働許可証の主な変更点の解説はこちらをご覧ください。

 

■目次
はじめに
第1章 総則 (第1条~第8条)
第2章 雇用(第9条~第14条)
第3章 労働契約(第15条~第58条)
第4章 職業訓練、職業技能水準の向上(第59条~第62条)
第5章 職場における対話、団体交渉、集団労働協約(第63条~第89条)
第6章 賃金(第90条~第103条)
第7章 勤務時間、休憩時間(第104条~第117条)
第8章 労働規律、物的責任(第118条~第132条)
第9章 労働安全、労働衛生(第133条~第152条)
第10章 女性の被雇用者に関する特別規定(第153条~第160条)
第11章 未成年の被雇用者とその他の被雇用者に関する特別規定(第161条~第185条)
第12章 社会保険(第186条~第187条)
第13章 労働組合(第188条~第193条)
第14章 労働争議の解決(第194条~第234条)
第15章 労働に関する国家管理(第235条~第236条)
第16章 労働監査、労働に関する法律違反の処罰(第237条~第239条)
第17章 施行条項(第240条~第242条)

はじめに

労働法は「第1章 総則」、「第2章 雇用」、「第3章 労働契約」、「第4章 職業訓練、職業技能水準の向上」、「第5章 職場における対話、団体交渉、集団労働協約」、「第6章 賃金」、「第7章 勤務時間・休憩時間」、「第8章 労働規律、物的責任」、「第9章 労働安全、労働衛生」、「第10章 女性の被雇用者に関する特別規定」、「第11章 未成年の被雇用者とその他の被雇用者に関する特別規定」、「第12章 社会保険」、「第13章 労働組合」、「第14章 労働争議の解決」、「第15章 労働に関する国家管理」、「第16章 労働監査、労働に関する法律違反の処罰」、「第17章 施行条項」の全17章で構成されています。


第1章 総則 (第1条~第8条)

第1章は、第1条から第3条において、労働法の適用範囲や対象者、労働法内の「被雇用者」「雇用者」「労働組合」などの定義について説明がされています。第4条では、労働に関する国家政策として労働に対する考え方がまとめられています。また第5条から第8条で、雇用者や被雇用者の権利と義務、労使関係の定義、被雇用者の保護が書かれています。


第2章 雇用(第9条~第14条)

第2章は、第9条から第11条では、あらためて雇用者や被雇用者の就職や採用に関しての権利を説明しており、第12条と第13条では雇用創出に際する国家的な取り組み(政策)や省・中央直轄都市の人民委員会による雇用計画について説明しています。
最後の第14条では職業紹介所や人材紹介会社に関する規定が書かれています。


第3章 労働契約(第15条~第58条)

第3章は、「第1節 労働契約の締結」、「第2節 労働契約の履行」、「第3節 労働契約の修正・補足」、「第4節 無効な労働契約」、「第5節 労働派遣」の5つの節に分けられています。 第1節 第15条から第4節 第52条までは雇用者と被雇用者の労働契約について細かく規定されています。
第5節では労働派遣について書かれており、第53条で労働派遣の定義、第54条で労働派遣企業の規則、第55条で労働派遣企業と労働派遣受入先との間の規則が記載されています。
第56条から第58条では労働派遣企業・労働派遣受入先・派遣労働者のそれぞれの権利と義務について説明されています。

労働契約書については、別記事:「ベトナム労働法 : 労働契約書」もご参照ください。


第4章 職業訓練、職業技能水準の向上(第59条~第62条)

第4章は、第59条から第60条までは、被雇用者の職業訓練や職業技能水準向上における雇用者の責任、第61条では雇用者の下で就労させるための職業訓練をさせた場合について書かれています。


第5章 職場における対話、団体交渉、集団労働協約(第63条~第89条)

第5章は、「第1節 職場における対話」「第2節 団体交渉」「第3節 集団労働協約」「第4節 企業の集団労働協約」「第5節 産業別の集団労働協約」からなっています。
第1節の第63条から第65条では職場における対話の目的や形式が書かれており、これらは労使関係構築を目的とされていることが書かれています。
第2節の第66条から第72条までは団体交渉における目的や規則が書かれています。また各当事者は団体交渉要求権を持っており、これを行使された際における規則が明記されています。
第3節の第73条から第82条では集団労働協約の定義が記載されており、集団労働協約の規則が細かく決められています。
第4節は第83条から第86条までで、企業の集団労働協約について定義されています。
第5節は第87条から第89条までで、産業別の集団労働協約について定義されており、「第4節 企業の集団労働協約」との関係性も述べられています。


第6章 賃金(第90条~第103条)

第6章は、第90条から第103条において賃金の定義がされており、最低賃金から賃金の支払い時期、支払い方法などが書かれています。また、時間外労働・休日労働・深夜労働における賃金の規定がされています。


第7章 勤務時間、休憩時間(第104条~第117条)

第7章は、「第1節 勤務時間」「第2節 休憩時間」「第3節 祝日、私的な休暇、無給休暇」「第4節 特殊な業務を行う者の勤務時間・休憩時間」から成っております。
第1節 第104条から第107条で、1日や1週間の勤務時間や1ヶ月や年間の時間外労働時間の規定を説明されています。
第2節 第108条から第109条では、勤務中の休憩時間が規定されています。第110条で休日について規定されています。第111条から第114条では年次有給休暇について定義されており、勤務年数による年次有給日数の増加から、有給期間中に移動を伴う場合の交通費なども規定されています。
第3節 第115条から第116条で、休日以外の祝日やテト休み、私的な休暇として親族の冠婚葬祭での休暇取得日数などを規定されています。
第4節 第117条でここまでの例外として特殊な業務を行う場合の勤務時間・休憩時間が規定されています。

勤務時間、休憩時間については別記事:「ベトナム労働法:労働時間・有給休暇・残業」もご参照ください。


第8章 労働規律、物的責任(第118条~第132条)

第8章は、「第1節 労働規律」「第2節 物的責任」の2つから成っています。
第1節は、第118条で労働規律を定義されており、第119条から第122条では労働規律を構成する就業規則について規定されています。第123条から第129条までは労働規律違反があった場合の処分や処分の手順などが細かく規定されています。
第2節 第130条と第131条で被雇用者に対して雇用者が物的責任としての損害賠償を行う際の規定がされており、第132条で労働規律や物的責任に関することで被雇用者が当事者と成った場合の苦情を申し立てが出来ることを規定されています。


第9章 労働安全、労働衛生(第133条~第152条)

第9章は「第1節 労働安全・労働衛生に関する総則」「第2節 労働災害、職業病」「第3節 労働災害・職業病の防止」から成っています。
第1節 第133条で労働安全・労働衛生に関する法律の順守を掲げられています。第134条から第136条では労働安全・労働衛生に関する政府の政策や計画、基準を説明しています。第137条で職場における労働安全・労働衛生を保証を規定されています。第138条で労働安全・労働衛生に対する雇用者・被雇用者の義務が明記されています。
第2節 第139条で労働安全・労働衛生に対する業務担当者の必要性が述べられています。第140条で事故処理や緊急救助が必要になった際の雇用者における責任が明記されています。第141条では有害な条件下で就労する被雇用者の権利が記載されています。第142条と第143条で労働災害と職業病について定義され、第144条と第145条で労働災害や職業病の被害を受けた被雇用者の権利と雇用者の責任が明記されています。第146条で労働安全・労働衛生における禁止行為が規定されいます。
第3節 第147条から第151条で、労働安全・労働衛生における日頃の点検、計画・対策の必要性がまとめられています。第152条では雇用者が被雇用者の健康を確保しないといけないと規定されています。


第10章 女性の被雇用者に関する特別規定(第153条~第160条)

第10章 第153条では女性の被雇用者に対する国家政策が説明されており、女性の雇用創出を図るべく減税政策について記載されています。第154条で女性の被雇用者に対する雇用者の義務が定義されています。性的平等はもちろんの事、育児の補助や支援についても言及されています。また第155条では妊婦である女性の被雇用者の保護による労働規律の特例措置、第156条では労働契約の一方的解除や一時的停止の権利についても記載されています。第157条で産休について定義されており、第158条で産休後の職場復帰についても明記されています。第159条では育児に際しての休暇やその際の手当が規定されています。


第11章 未成年の被雇用者とその他の被雇用者に関する特別規定(第161条~第185条)

第11章では「第1節 未成年の被雇用者」「第2節 高齢の被雇用者」「第3節 外国で就労するベトナム人の被雇用者、在ベトナムの外国の組織・個人のために 就労するベトナム人の被雇用者、ベトナムで就労する外国人の被雇用者」「第4節 障害を持つ被雇用者」「第5節 家事手伝いの被雇用者」「第6節 その他の被雇用者 」の6つから成っています。
第1節 第161条で未成年の被雇用者に関する定義されています。第162条から第165条で未成年の被雇用者を使用する際の雇用者の責任や義務が定義されており、また勤務時間などについても規定されています。
第2節 第166条と第167条で高齢の被雇用者についての定義や、高齢の被雇用者の使用に際する雇用者の責任が規定されています。また高齢の被雇用者の権利についても記載されています。
第3節 第168条では外国で就労するベトナム人の被雇用者を奨励することや、法律による保護が明記されています。
第169条からは第175条まではベトナムで就労する外国人の条件や、労働許可書について規定されています。

労働許可証の取得については、別記事:「ベトナムの労働許可証(ワークパーミット)と必要書類 2017」もご参照ください。

第4節 第176条で障害を持つ被雇用者に対する国家政策が説明されています。第177条で障害を持つ被雇用者を使用する際の雇用者の責任、第178条では使用する際の禁止行為が明記されています。
第5条 第179条で家事手伝いの被雇用者の定義がされています。第180条で家事手伝いの被雇用者の労働契約について記載されています。第181条では家事手伝いの被雇用者に対する雇用者の義務、第182条では家事手伝いの被雇用者の義務が明記されています。また第183条では雇用者の被雇用者に対する厳禁行為が記載されています。
第6節 第184条と第185条では芸術やスポーツの分野で就労する被雇用者について規定されています。


第12章 社会保険(第186条~第187条)

第12章 第186条で雇用者と被雇用者において、社会保険・医療保険・失業保険の加入が義務が規定されており、その中で社会保険と医療保険に関する法律に基づく制度を享受できることが明記されています。
第187条では定年退職年齢の規定や特例条件が明記されています。


第13章 労働組合(第188条~第193条)

第13章 第188条で労使関係における労働組合の役割が定義されています。第189条と第190条で労働組合の設立・加入・活動に関する被雇用者の権利と雇用者の禁止行為について明記されており、第191条で労働組合幹部の権利が明記されています。第192条で労働組合に対する責任者の責任が明記されています。第193条で労働組合の活動条件の保証がされています。


第14章 労働争議の解決(第194条~第234条)

第14章は、「第1節 労働争議の解決に関する総則」「第2節 個人労働争議の解決権限及び解決手順」「第3節 団体労働争議の解決権限及び解決手順」「第4節 ストライキおよびストライキの解決」「第5節 裁判所によるストライキの合法性審査」から成っています。
第1節は、第194条から第199条で労働争議の解決に関する総則が記載されています。
第2節は、第200条から第202条で個人労働争議の解決権限及び解決手順について規定されています。
第3節は、第203条から第204条で団体労働争議の解決権限及び解決手順について規定されています。第205条で県レベルの人民委員会による権利に関する団体労働争議の解決、第206条で労働仲裁委員会による利益に関する団体労働争議の解決が明記されています。第207条で労働争議の解決要求の期限が規定されており、第208条で解決中の禁止行為が明記されています。
第4節は、第209条から第222条でストライキ及びストライキの解決が明記されています。
第5節は、第223条から第234条で裁判所によるストライキの合法性審査の定義や規定が明記されています。


第15章 労働に関する国家管理(第235条~第236条)

第15章の第235条と第236条で労働に関する国家管理として国家管理の内容や管理権限について規定されています。


第16章 労働監査、労働に関する法律違反の処罰(第237条~第239条)

第16章は、第237条で労働に関する国家監査の責任や、その任務について明記されています。第238条で労働監査の役割が記載されています。第239条で労働に関する違反処分について記載されています。


第17章 施行条項(第240条~第242条)

第17章 第240条で、この改正労働法の効力について記載されています。第241条で被雇用者が10人未満の職場において労働法の効力の減免について記載されています。第242条でこの改正労働法が可決された日付が明記されています。

 

*2020年3月5日最終更新

 

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