ベトナム労働法 : 労働契約書・雇用契約書と試用期間

ベトナム労働法 第3章 労働契約(第15条~第58条)は、雇用者(企業)が被雇用者(従業員)を雇う際に、雇用主と被雇用者の間で交わされる労働契約書に関して記載されています。ここでは、ベトナム労働法の第3章 労働契約を参照しながら、労働契約書を締結する際の注意点などを解説していきます。

 

 

はじめに

 

労働契約書とは、雇用者(企業)が被雇用者を雇う際、3ヶ月未満の一時的な雇用を除き、文書にて作成する必要があります。その際、英語や日本語などで作成することも出来ますが、ベトナム語の労働契約書の作成が必須となっており、外国語の労働契約書の内容に不備や差異があっても、ベトナム語の労働契約書が優先されます。
労働契約書の修正は、3営業日前までに通知し両当事者の合意があれば修正が出来ます。

 

「労働法 第3章 労働契約 第1節 労働契約の締結 第16条 労働契約の形式」で期間が3ヶ月未満の仕事の場合、口頭で労働契約を締結することが出来ると記載されています。しかし、ベトナム政府も推奨しているように、事後のトラブルを避けるため、試用期間中であっても労働契約書を交わすことが望ましいです。

 

労働契約書の種類(労働法第22条)

 

①無期限労働契約
②有期限労働契約(12ヶ月以上36ヶ月未満)
引き続き被雇用者が就労する場合、契約満了後30日以内に再度契約を締結しないと、無期限労働契約となります。
③有期限労働契約(12ヶ月未満)
引き続き被雇用者が就労する場合、契約満了後30日以内に再度契約を締結しないと、期限24ヶ月の有期限労働契約となります。

※なお、労働者保護の観点から有期限労働契約の更新は1回しか認められておらず、その後の契約更新は有期限労働契約を結んだとしても強制的に無期限労働契約となります。(労働法22条2項)

 

労働契約の種類は、「労働法 第3章 労働契約 第1節 労働契約の締結 第22条 労働契約の種類」にて定義されています。

 

労働契約書の書き方(労働法第23条)

 

労働契約書は、労働条件・労使関係など権利と義務に関する雇用者と被雇用者との間の合意文書です。労働契約書はベトナム語で2部作成し、締結後は雇用者と被雇用者が各自1部ずつ保管します。
労働契約書には、記載必須項目があるので、記載が必要な項目について説明致します。

 

記載が必要な項目

①雇用者(企業)もしくは代表者の氏名と住所
企業登録証明書、合作社登録証明書、投資証明書などの法的な書類に記載されている企業名や組織名及び所在地のこと。
②被雇用者の氏名、生年月日、性別、住所、身分証明書番号(CMNDなど)
ベトナム人の場合の身分証明書番号は、人民証番号(CMND)もしくは旅券番号のこと。外国人の場合は、労働許可証(ワークパーミット)の労働許可番号・交付日・交付場所の記載が必要となります。
③職業(職務内容)と就業場所
職業(職務内容)とは被雇用者が実施すべき業務内容のことで、就業場所は雇用者と被雇用者が合意した業務を行う勤務の範囲と勤務地となります。但し、勤務地が複数になる場合は主な勤務地のみの記載で構いません。
④労働契約の期限
無期限労働契約の場合は、労働契約開始時期となります。
有期限労働契約の場合は、月数または日数などの実労働時間、労働契約開始及び終了時期、季節、プロジェクトなどによって異なります。
⑤給与、給与の支払い形式と支払い期限、諸手当など
⑥昇給制度
労使双方で合意した昇格・昇級・昇給後の労働条件、労働時間、労働期間
⑦勤務時間、休憩時間
・勤務時間
1日の就労時間及び週内の総就労時間、シフト制の場合は1シフト・1日・1週間などの就労開始時間及び終了時間、週内の就労日数、時間外労働及びそれに関連する条項
・休憩時間
就労中の休憩開始時間及び終了時間、週休、年休、祝日、正月休暇、私用による休暇、無給休暇
⑧被雇用者のための労働保護設備の供給
筆記用具、ヘルメット、マスク、手袋などの数量、種類、品質、及び使用期限を明確に記載すること。
⑨社会保険と医療保険
各保険金の月給の割合から算出される掛金、各保険の支払い方法と支払い期間
⑩職業訓練、職業技能水準の向上
社内研修、語学研修などにかかる経費と時間の保障に対する雇用者と労働者の権利と義務。
⑪その他
労使間で協議された労働契約に関する内容。

以上となりますが、農業・林業・漁業・塩業分野で従事する被雇用者の業務内容によっては、これらの項目を両当事者(雇用者と被雇用者)の合意があれば追加・削除が出来ます。

 

「労働法 第3章 労働契約 第1節 労働契約の締結 第23条 労働契約の内容」にて記載が必要な項目が規定されています。
また各項目の補足事項は、2015年1月12日に発布された「政令 労働法の一部内容について詳細と施行ガイドラインを規定する(05/2015/ND-CP)第2章 労働契約 第1項 労働契約の締結 4 条 労働契約内容」によって規定されています。

 

労働契約書のサンプル

 

Hợp đồng lao động(ベトナム語版)
Labour Vontract(英語版)
*上記リンクは共にvndocの労働契約書ダウンロードページへ飛びます。

 

試用契約と試用期間(労働法第26条~第29条)

 

試用期間

試用期間とは、一定の期間中に雇用者(企業)と被雇用者が権利や義務について協議することが出来る期間です。しかし、季節的な業務の労働契約の被雇用者に対しては、試用期間を設けることができません。(第26条2項)

試用期間は、一つの業務に対して一度限り設定することが出来ます。しかし、業務によって期間が決められています。
①短期大学以上または専門技術を要する場合は60日間
②職業訓練学校・専門学校以上もしくは専門的な技術や経験を持つスタッフやワーカーは30日間
③上記に該当しない場合は6営業日

 

試用期間中の給与

労働契約(本採用時)と同等の業務をする場合は、労働契約(本採用)給与の85%と規定されています。

 

試用期間の結果通知と労働契約

試用期間の①②に該当する被雇用者に対しては、試用期間終了の3日前、③に該当する被雇用者に対しては試用期間終了日前に結果を通知する必要があります。試用期間中の被雇用者が雇用者の要求レベルに達していた場合は試用期間終了後、即時に労働契約書を交わす必要があります。

 

「労働法 第3章 労働契約 第1節 労働契約の締結 第26条から第29条」にて”試用と試用期間”の定義がされています。
また試用期間の結果通知に関しては、2015年1月12日に発布された「政令 労働法の一部内容について詳細と施行ガイドラインを規定する(05/2015/ND-CP) ”第2章 労働契約 第1項 労働契約の締結 第7条 試用労働の結果の通知”」によって規定されています。

 

*2017年9月13日最終更新

 

*免責条項 なるべく正確さを期すように努めておりますが、上記の内容の正確さを保障するものではありません。必ず専門家にご確認、ご相談をしていただくようにお願い致します。